【心奮い立つ詩 ②】病床からの五行の叫び

心奮い立つ詩

岩崎航さんという詩人をご存じでしょうか。病室のベッドの上から五行の詩をよむ40代半ばの方です。3歳のとき筋肉が次第に衰えていく難病の筋ジストロフィーを発症し、人工呼吸器なしには生きられない重度の病と戦い続けています。

もし岩崎さんの姿をお知りにならない方は、NHKのこちらの動画(NHKのfacebookページ)を見てみてください。点滴の管につながれてベッドに横たわりながら、言葉をめいいっぱい紡ぎ出している姿に、私は何か胸を打たれる思いがします。

私は20代後半の頃、詩を愛する女性の心療内科の先生と知り合いました。その先生をきっかけに知ったのが岩崎航さんです。

どんな詩を書く方なのか、ひとつご紹介します。

本当に
心の底から
願っていることに
向き合えば
いのち 輝く

五行歌というのは「5行で書く」こと以外にルールのない詩です。俳句のような5・7・5といった決まりは一切ありません。五行歌の愛好家でつくる「五行歌の会」によると、いちおう1行は1〜10文字が目安だそうですが、形式にとらわれない自由さが特徴です。

私は岩崎さんの力強く、簡潔で、実感を込めた言葉に、何度となく力をいただいてきました。人生で最もつらく感じたときに救われた詩人の一人です。なにか悩みを抱えている方に少しでも力になればと思い、いくつかご紹介したいと思います。

他人がではない
自分で起こした
人生の胎動は
どんどん
拡がってゆく
自分の力で
見いだした
ことのみが
本当の暗闇の
灯火となる

自分自身の手で人生を切り拓いていきたいのだという、ほとばしるような思いを感じます。岩崎さんは決して難しい言葉は使いません。自分の内側にある思いを、こみ上げてくる言葉に乗せて表現しているように感じます。読むだけでなく、声に出して読むとより言葉の響きを感じられると思います。

まず、反応として
自分を抑えて折りたたむ
染みついている
この傾向に
たたかいを挑むんだ

私たちは日々、自分の率直な思いをどれほど大切にできているでしょうか。日本はよく「察する文化」だと聞きます。「言わぬが仏」という言葉もあります。しかし、本心をうちに留めておくことが、本当に良いことなのでしょうか。本音をしまい込んでいるうちに、自分自身が何を望んでいるのかわからなくなりはしないでしょうか。自分自身の経験もあり、私はこの詩に深く感じるところがあります。

春の温かさを
知るための
冬であったと
言い切ることに
臆するな

私はこの詩を、苦しい時に何度も何度も読みました。読むたびに涙が出ました。自分が悩み続けてきた人生に対する違和感は、きっといつか過去のものになるのだと。悩み明け暮れている今は苦しい冬だけど、いつかきっと柔らかな暖かさを感じる春がくるのだと信じました。この詩は悩みのトンネルに入り込んでいた私にとって、遠い先にかすかに見えるあかりでした。

私自身の長い冬は、ようやく終わりを迎えているように感じます。私にとって今、早春の時期を迎えています。厳冬期には決して吹くことのなかった、温かい風が心にそよいでいます。この詩のように、春の暖かさを知るための冬であったのなら、冬の寒さにもきっと意味があったのだろうと思えるのかもしれません。

私のこれからの仕事は、一人ひとりの思いを生かしていく仕事です。自分が経験したからこそ、自分がわからないという苦しみはわかるし、もっと個人がいきいきと自分らしさを発揮できる社会になってほしいと、僕は心から願っています。つまらない世間体に縛られることなく、よくわからない常識にとらわれることなく、あなたにしか生きられない人生を生きてほしい。その力になることが私の歓びです。

五行歌は手軽さから、愛好者は増えてきているようです。五行歌の会によると、全国の愛好者は20万人~30万人で、学習に取り入れている学校も120校以上あるそうです。

5行で書くと、なんとなく詩っぽくなるからおもしろいですね。自分の思いを表現しやすいので、コーチングにも生かせそうです。

<いずれの詩も「点滴ポール 生き抜くという旗印」(ナナロク社)から引用しました>

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