46都道府県を旅して知った「コンセプトの力」〜時代超えて人を動かすもの

バンライフルポ

独立してちょうど1年になります。この1年、私は旅ばかりしていました。軽トラキャンピングカーで北海道から鹿児島まで46都道府県をめぐり、200日を旅に使い、日本ー南アフリカ間の距離にあたる約1万3千キロを走りました。軽トラの荷台に乗せたコンテナハウスが、職場であり、リビングであり、キッチンであり、寝室でした。

この旅を通じ、私が学んだことは「コンセプトには、人を呼び寄せる力がある」ということです。人はコンセプトによって動かされるのだと思い至りました。旅で出会った5つのコンセプトを紹介したいと思います。

北海道の「圧倒的な大自然」

海に浮かぶ利尻富士が巨大な存在感を放っていた(北海道・利尻島)

まず北海道です。北海道には明確なコンセプトがあります。「圧倒的な大自然」です。

私は8月から9月半ばにかけて50日間、夏の北海道を走り回りました。その間、たくさんの旅人に出会いました。

東京から軽キャピングカーで毎夏やってくるというご夫婦、永続20年勤務の休暇で横浜からやってきたバイク乗りの男性、インドから取り寄せた三輪のオートリクシャーで神戸からやってきた女性など、思い思いに夏の北海道を楽しんでいる旅人そろいでした。北海道の大地に憧れて、東京から移住した若いご夫婦にも出会いました。

北海道の何が、旅人を引き寄せているのでしょうか。一言でいえば「日本離れした大自然」でしょう。「日本の外国」という異名もあるほど、北海道だけが持つ自然のスケールに惹かれてやってくるのだと思います。

私自身も数々の光景の心に刻まれています。知床の海をうねるように跳ね上げたマッコウクジラの勇姿、ヒグマの親子連れが川に飛び込んで魚をバシャバシャと追いかける姿、北限の海に浮かぶ孤峰・利尻岳の悠然たる姿、空と湖面が緋色に染めあげられた風蓮湖の朝焼け、丘ごと撫でてみたい衝動に駆られた礼文島の草原など、どの光景も鮮やかに蘇ります。「圧倒的な大自然」は北海道だけがもつ極めて魅力的なコンセプトとして、人を呼び寄せ続けるのでしょう。

明治維新の「新しい国」

この旅では、歴史スポットも数多く訪ねました。コンセプトは時代も作る力があると感じました。

その一つは明治維新のコンセプトです。幕末から明治にかけては、日本の歴史の中で最も社会が大きく変わった時代と言えるでしょう。それまで閉じていた国が、西洋の科学技術や社会制度などを一気に取り入れて、わずか50年ほどの間で社会の質は激変しました。この社会の激変を生み出したのは「新しい国」というひとつのコンセプトではないかと思います。

九州・山口では、明治維新ゆかりの福岡の筑豊炭田、佐賀の海軍所跡、長崎のグラバー園、鹿児島の集成館、山口の松下村塾などを訪ねました。これらはいずれもユネスコの「明治日本の産業革命遺産」として「人類共通の財産」の価値を認められた場所です。

現地を訪ねて感じたのは、当時生きていた人の「強烈な危機感」です。欧州列強の植民地になることを身をもって恐怖と感じ、このままではいけないという思いに駆り立てられていたことが実感として迫ってきます。

新しい国を作るため薩摩の青年19人が欧州に旅立った(薩摩藩英国留学生記念館、鹿児島県いちき串木野市)

幕末の志士と呼ばれる当時の20、30代の青年たちは、命をかけてめざしていたものは何だったのでしょうか。その本質にあるのは、坂本龍馬の「今一度日本を洗濯致したく候」という言葉からも読み取れる「国を新しく」というコンセプトだったのだと思います。

そのコンセプトに共鳴したからこそ、薩摩の西郷隆盛、長州の木戸孝允、土佐の坂本龍馬らは手を取り合ったのではないでしょうか。明確なコンセプトには、多少の思惑の違いを超えて人を結びつける力があるのだと思います。

「新しい国」というコンセプトのもと、先進的な薩摩や長州の若者たちがいち早くちょんまげを切り、刀を捨て、欧州へいち早く学びにいったのです。コンセプトは人を動かし、共鳴の輪を広げ、時代を変える力もあることを実感しました。

織田信長の「天下布武」

関西や東海の歴史スポットを旅して感じたのは、織田信長のコンセプトです。

安土城の巨大さから織田が目指していた世界観を垣間見た(滋賀県・安土城跡)

琵琶湖をのぞむ安土城、金華山に立つ岐阜城、奥三河の長篠合戦地、最期の地・本能寺など、織田信長ゆかりの場所を訪ねました。そこで感じたのは、織田信長がいかに多くの人の心を掌握し、動員し、それまでと異なる時代を作ろうとしていたかということです。

その時代を作るためのコンセプトこそ「天下布武」だったのだと思います。荒れる戦国の世でいち早く「天下を統一する」にするという先進的なコンセプトを掲げることにより、時代のうねりを作っていったのではないでしょうか。

尾張の一武将にすぎなかった織田信長が、室町幕府を滅亡に追い込むほどに強大な力を持つことができたのは、彼の持っていたコンセプト力によるものなのだと思います。明確なコンセプトは、自由な商売を認める楽市楽座や火縄銃を使った新しい戦術など、革新的な政策にもつながっていったのではないでしょうか。織田信長は、日本屈指のコンセプト作りの名手だったとも言えそうです。

熊野古道の「よみがえり」

紀伊半島では熊野古道をめぐるコンセプトが鮮烈に刻まれています。そのコンセプトとは「よみがえり」です。

熊野古道とは現在の和歌山県に位置する霊場・熊野三山(本宮、新宮、那智)に参詣する修行の道をいいます。熊野への参詣は平安時代の皇族や貴族から始まり、京都から往復600キロメートルの道を往復1ヶ月かけて歩きました。急峻な谷や山が連なる山道のため、命を落とす人も少なくなかったそうです。それでもこの信仰は江戸時代には民衆に広がり「蟻の熊野詣で」と言われるほど多くの巡礼者が行き交いました。

熊野では「よみがえりの地」にふさわしい荘厳な景観が見られた(和歌山県・那智の滝)

急峻な谷や山が続くこの地は、車で巡ってもヒヤヒヤするほどです。なぜ命をかけてでも、この地にきたのか、私にはとてもふしぎでした。その謎が、熊野本宮エリアにある「大斎原(おおゆのはら)」と呼ばれる霊場を訪ねたとき、氷解する思いがしました。

その地に掲げられた立て札には「ここは全熊野古道の終着点であり、よみがえりの出発点」と書かれていたのです。

熊野古道に通底するコンセプトは「よみがえり」だったことを知りました。この「よみがえり」というコンセプトこそ、平安時代から人を引き寄せ続けてきた力なのでしょう。現代の人でも「生まれ変わりたい」「やり直したい」という思いは、人生で不遇な時には特に持つものだと思います。熊野古道は2004年にユネスコ世界遺産にも登録され、「よみがえり」というコンセプトは今でも人を世界から呼び寄せ続けています。

沖縄戦の「神の国」

コンセプトの力には、恐ろしさも感じました。恣意的に悪用される場合もあると知ったためです。鹿児島の知覧特攻平和会館でこのことを思い知りました。

どんな思いで旅立ったのだろうか(鹿児島県知覧市)

館内は、沖縄戦で散華した青年たちの無数の手紙や写真で埋め尽くされています。青年たちが飛び立つ直前に書き綴った遺書は、どれも一様に、勇ましい言葉が踊っています。「死ぬことこそ男の本望」「でっかいのを沈めてきます」「最期は笑って征きます」といった言葉が並びます。

一人ひとりの手紙を見ながら、私は胸が締め付けられるような思いと、大きな疑問が湧いてきました。

現代を生きる私たちと、さして感覚は変わらないはずの当時の瀬年たちはなぜ、「死ぬことを喜び」として捉えていたのか。もちろん、一人ひとりの心情は異なっていたはずです。しかし、手紙だけを見ると、皆そろって趣旨が同じことを残しています。本心ではないかもしれませんが、異様なまでに「そろっていること」に私は言いようのない違和感を持たずにはいられませんでした。

これを可能にさせたのが、当時の政府が徹底的に国中を染め上げた「神の国」というコンセプトだったのだと思います。このコンセプトを徹底させることで、有無も言わさず国を特定の方向にまとめていったのでしょう。現在のロシアのウクライナ侵略を見ても、プーチン政権が国内向けにとっているのは徹底的な情報操作です。都合のいいコンセプトに染めようとする為政者に対して、私たちは常に気をつけなければならないのだと思います。

人を動かすコンセプトの共通点

高千穂の神話伝説も一つのコンセプトだ(宮崎県)

この5つの他にも、人が行きたくなる場所には必ずコンセプトがあることに気づきました。例えば、宮沢賢治が唱えた岩手の「イートハーブ」、倉敷・美観地区の「白壁の蔵屋敷」、高野山の「真言密教の聖地」、高千穂の「天照大神がお隠れになった場所」など、言葉を見るだけでなんだか興味を惹かれるようなコンセプトに各地で出会いました。

人を惹きつけるコンセプトに共通することはなんでしょうか。私は2つあると思います。「わかりやすさ」と「真似るのが難しい」ことです。

わかりやすさというのは、一言で「なんだか興味がひかれる」もの。真似ることが難しいというのは「その場所やその時代ならではのもの」だと思います。

誰もがコンセプトを持つ時代

コンセプトを持つことは、観光地だけでなく、現代を生きる私たち一人ひとりにとっても、大切なことなのではと思います。なぜかといえば、現代は史上かつてないほどに「自分で選べる」時代だからです。

インターネットがあまねく普及し、働き方が多様化し、副業も解禁され、さまざまなライフスタイルが可能な時代です。大きな会社にあえて所属せず、自分で仕事をする人も増えています。

私自身も昨年3月、12年間勤めた会社を辞めて、独立して生きる道を選びました。この1年間、コーチの仕事をしながら多くの人と関わる中で、潜在的に「自分のコンセプトがなんなのか」悩んでいる人は多いように感じてきました。生き方の自由度が増すということは、つまり自分のコンセプトが問われる時代に入ったとも言えるのではないでしょうか。

コンセプトがはっきりしている人は、仕事も人生も自分で選び、果敢に道を切り開いていっているように感じます。逆にご自身のコンセプトが見つかっていない人は、旧来的な世界から抜け出せていないように思います。

観光地と同じように、人も「わかりやすく」「真似るのが難しい」コンセプトを持っている人の周りには人が集まります。自分のコンセプトを持つことは、お互いのことを理解し合いながら協業していくために、欠かせないことではないかと思います。

コンセプトがないことの代償

ただ日本で育った私たちにとって「自分のコンセプトがわからない」のは当たり前のことだと思います。「横並び」「出る杭にならない」ことが暗黙的に「良いこと」とされ続けてきた国だからです。令和になった現代ですら、子供の憧れるナンバーワンの職業が「会社員」という、ふしぎな国です。

しかし個の見えない、まるで「のっぺらぼうの国」の代償は、看過できないほどになっているのではないでしょうか。国際的な調査によれば、熱意のある社員は5%と世界最低水準で、自ら命を絶つ人も2万人を越え続け、うつ病を含む心の病を抱えている人は300万人近くに上ります。かつての「経済大国」という看板も、もはや一世代前のものとなり、海外から見れば日本の存在感はほとんどなくなってきているようです。

政治家は「成果こそ大事だ」と唱えますが、その成果とはなんの成果なのでしょうか。経済界は「成長が大切だ」と叫びますが、その成長とはどこへ向かう成長なのでしょうか。人が幸せを感じられない「成長」も「成果」も、どれほどの意味があるのでしょうか。

「個の重要性」が強調されるのは、いまに始まったことではありません。欧米を真似た個が前面的にぶつかり合うような社会がいいとも思いません。しかし、現在の選択肢の多い社会を自分で舵をとって生きていくためには、自分なりのコンセプトを見出すことは欠かせないのではと思います。

内側から見つけるコンセプト

自分のコンセプトはどうすれば見つかるのでしょうか。私は内側にあるものを掘り起こすことが大切だと思います。なぜなら、外からとってつけたような即席のコンセプトでは自分に定着しないと思うからです。それは地方でよく見かける「○○銀座」といったような東京のコピーのような場所を、わざわざ訪ねたくはないのと同じだと思います。

内側からコンセプトを見つけるために大切なことは、過去の歩みを振り返ることだと思います。自分が何に出会い、何を感じて、何を考えてきたのか。今それらをどう感じるのか。過去の歩みの中にこそ、その人ならではのコンセプトの原型があるのだと思います。

世界屈指のコンセプトメイカーでもあったアップル創業者のスティーブ・ジョブズは、スタンフォード大学の卒業スピーチで「点と点をつなぐこと」を強調しています。次のように語っています。

You can’t connect the dots looking forward. You can only connect them looking backwards.

(将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです)

スティーブ・ジョブズ、米スタンフォード大卒業式(2005年6月)のスピーチより

過去をひも解き、感じていたことや考えていたことを省みる中で、その人のコンセプトの原石が見つかるのではないでしょうか。輝く原石は、地中深くに埋まっているのと同じように、隠したくなるような過去だったりするのかもしれません。しかし実はそうしたものこそ、最も光を放つ原石である場合も多いのではと思います。

コンセプトがひらく新たな物語

自分のコンセプトを見つけることで、人は新しい力を得ることができると思います。私自身も、2年前まで精神的などん底にいました。そこから立ち上がることができたのは、自分の価値観を徹底的に掘り下げ、新しい自分なりビジョンを打ちたてたからこそです。

新しいコンセプトを作るということは、自分の中で行き詰まった物語を新しい物語に書き換えることであるとも思います。人は事実よりも、ストーリーに影響されると言います。自分の中で新しい物語を生み出すことによって、自分が本当に望む人生へ踏み出していけるのではないでしょうか。

私はコーチとして、一人ひとりのコンセプトを見出し、新しい物語を描いていく仕事をしていきたいと思っています。私はこの4月、京都芸術大学の大学院に進学します。独立1年目の旅を研究材料に活かし、新しい価値を世の中に生み出していきたいと思います。

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