【30代から要注意】ミッドライフクライシスとは<具体例あり>

私見

「ミッドライフクライシス、最近聞くけどなんだろう」「ミドルの危機ってどんなものなのかな。30代だけど気になる…」。この記事ではこうした疑問に答えます。

「ここ数年、ずっとモヤモヤした状態が続いているな」と思われる方は、もしかするとミッドライフクライシスに陥っているかもしれません。ただ、ミッドライフクライシスはどのような症状で、どうすれば乗り越えられるのか、必要な情報を届けている記事はほとんどありません。

自分自身が30代半ばで重度のミッドライフクライシスに陥り、それを乗り越えた体験を通じて「ミッドライフクライシスとは何か」という疑問を解消していきたいと思います。この5分ほどの記事さえ読めば、ミッドライフクライシスが一通りわかる内容にまとめてお伝えします。

ミッドライフクライシスは働き盛りが陥る危機

ミッドライフクライシスとは、一言で言えば、ミドル世代特有の心理不安のことです。20代で確立したはずの自己が、30代以降再び揺らぎ始めることからくる精神的な不安定のことを言います。分かりやすく言えば「人生、このままでいいのだろうか」と不安に感じるミドル世代の方の悩みです。

精神分析学者のエリオット・ジャックスが中年期特有の症状を研究し、1965年に発表した論文でMidlife Crisis(中年の危機)と名付けたことから始まりました。ミドルエイジ・クライシス(Middle age crisis)とも言われ、「第二の思春期」という呼び方もあります。

日本でも近年になってこの言葉は注目されるようになりました。特に2021年以降、関連書籍が出てきており、雑誌やインターネットの記事でも多くみられるようになりました。

最近の著書では「がんばらない」などの著作で知られる医師の鎌田實氏が2021年7月に「ミッドライフ・クライシス」という本を出しています。自身の体験談とあわせて、中年の危機の具体例を取り上げています。鎌田氏は「中年期の80%がこのミッドライフクライシスに遭遇する」という言い方をしています。

この「8割」に対して、著者はこの本では明確に示していません。何を根拠としているのか私なりに調べたところ、どうやら心理学者のダニエル・J・レビンソン氏の1978年の論文を基にした数字だと考えられます。

しかし海外の論文なども調べてみると、この数字は心理学の分野で確定的になっているというわけではなく「最大8割の人がなる可能性がある」といったところでしょう。米国の医師などの報告によれば3割程度とする記述もあります。

正確な割合はともかくとして、ミドル世代の一定程度の方がなる危機であることは確かなようです。

ミッドライフクライシスは「人生、このままでいいのだろうか」と不安に感じるミドル世代の悩みのことなんだね

ミッドライフクライシスの症状

では、ミッドライフクライシスの症状とは、どのようなものなのでしょうか。先行研究などを調べてみると、次の5つが特徴として挙げられます。

ミッドライフクライシス、主な5つの特徴

✔️ 人生に充実感を感じられない
✔️ 退屈や空虚、無意味の感覚
✔️ 過去を思い返し、激しく後悔する
✔️ 充実している人と自分を比較する
✔️ 衝動的で軽率な行動に走るここに文章を入力します

人生に充実感を持てずに、なんとなく退屈で空虚が気持ちが続いていることがひとつの特徴です。人によってその症状や重さは異なりますが、だんだんと深刻になると過去への激しい後悔に襲われたり、衝動的な行動をしてしまったりと、自らを追い詰めてしまうことにもなりかねません。

男性や女性によってもすこし症状は異なるようですが、強い倦怠感や何をしても楽しめないといった特徴は似ているようです

うつ状態との違い

「何をしても楽しめない」というのはうつ状態とも似ています。ミッドライフクライシスと何が違うのでしょうか。

まず「うつ病」というのは、気分障害の一つで医療的な措置が必要な病気です。専門医のもとで抗うつ薬などの服用が必要になり、しっかりとした休養を取るといった処置が必要になります。

一方でミッドライフクライシスとは、正式に病気として認知されているわけではありません。気分が塞ぎ込みやすいといった症状は似ていますが、深刻なうつ状態とは異なり、日常生活や仕事は続けられているといった状態です。

表面上は日々変わりなく過ごしているけれど、どことなく手応えがないといった感じの方が多いと思います。しかし、そうした手応えのなさの根本には、失われた青春を取り戻したいという願望や人生を根本的に変えたいという願望が潜んでいることが少なくありません。そのまま放置していると、治療が必要なうつ状態に陥る場合も出てきます。

中年の危機は、年単位で長引いてしまうケースも少なくないようです。米国の報告によれば、男性で3~10年、女性で2~5年程度続くとされます。長く「人生このままでいいのかな」と思い続けている方は、一度自分がミッドライフクライシスではないかと疑ってみてもいいかもしれません。

長く放置していると、少しずつ心をむしばんでいくことになるから気をつけないといけないね

なぜミドルの危機は起こるのか

なぜ充実盛りとも言える中年期に危機が起こるのでしょうか。いくつか要因が挙げられます。専門書や論文などを読むと次のようなことが原因にあげられます。

ミドルの危機が起きる7つの原因

✔️  自分の人生のピークが見えてくる
✔️ 人生の選択肢が狭まるように感じる
✔️ アイデンティティが確立できていない
✔️ 取り戻せないものに喪失感を覚える
✔️ 自分がもう送ることのない人生を知る
✔️ 次々と取り組まないといけない仕事
✔️ 社会や会社のルールに自分を合わせすぎている

これまで突っ走ってきたきたけれど、ふと立ち止まってみると果たしてこのままの人生の延長で自分は本当にいいのだろうかという漠然とした不安がつきまとうこと、これがミドルの危機の中心にあると言えそうです。

ミドルの危機に陥りやすい2タイプ

ではどういう人が特にミッドライフクライシスになりやすいのでしょうか。海外の研究例や関連書籍を調べてみると以下の2つのタイプの方が特に陥りやすいと言えそうです。

転職や独立経験のないミドル

一つ目のタイプは、社会人になってから転職や独立など大きな決断をした経験のない人です。

なぜなのでしょうか。それは一つの会社や組織にいる場合、自分を見つめ直す機会がほとんどないからです。就職活動の時にいわゆる「自己分析」をして以降、それっきりという方が多いのではないでしょうか。転職や独立をするときには自分の強みや好きなこと、価値観などをあらためて見つめ直し、自分がどういう人間なのかを知る機会になります。

しかし、同じ会社や組織に居続けた場合、そうする必要はありません。日本は雇用の流動性が低く、特に安定している大企業や公務員といった場合には同じ会社や組織に留まり続ける割合は非常に高いです。とりわけ、日本型の大企業や大組織に勤め続けている人に潜む危機だという認識をもっていた方がいいのかもしれません。

がんばり屋の「成功者」

もう一つの特徴はがんばり屋の方ほど、なりやすいことです。がんばり屋のかたはきちんと勉強をされていい学校に行き、そしていい会社に勤めている場合も多いと思います。結婚をされている方は一見順調に見えるでしょう。しかし「成功している」と見られる人ほど、陥る可能性が高いことにミドルの危機の怖さがあります。

なぜなら、傍目から見れば、順風満帆に見えていても、その人生を本当に望んでいるのかどうかは別問題だからです。社会的なルールにしたがって生きている人ほど、それを疑問に感じた時に、それまでの目標を見失ってしまいます。こうしたことからこの危機は心身をすこしずつ蝕むような苦しみがやってきます。

特にコロナ後のいま、私たちの暮らしはかつてないほどに激変しています。自宅での仕事、場所を問わない仕事が当たり前になってきています。私自身もコーチングの仕事をしながら、生き方の選択肢が増えている中で「このままでいいのだろうか」と悩む人がとても増えてきているように感じています。こうした価値観の変化が、ミッドライフクライシスが注目されている背景にあるのだと思います。

これまで真面目にがんばってきた人ほど、陥る可能性のある危機なんだね

20代の「自分探し」との違い

自分がどうしたいかわからないというのは「自分探し」と近いニュアンスがあります。30,40代で「自分探し」というと、少し戸惑ったりしっくりこないこともあると思います。20代の自分探しと、ミッドライフクライシスの克服とはどう違うのでしょうか。

「自分探し」はゼロからイチ

20代の「自分探し」の場合は、自分がどういう人間で、何が好きで何が得意なのかそもそもよくわからないことが前提にあります。そうしたゼロの状態から「自分はこういう人間だ」ということを見つける作業をいいます。

自分探しの場合は、いろいろな友人との出会いや就職活動などを通じて、「私はこういう人間だ」というものを見つけていきます。いわばふわふわ輪郭のない「ゼロの私」の状態から「イチの私」を作る作業が「自分探し」と言えるでしょう。

ミドルはいったん崩して再構築

ではミドル世代のこのままでいいのだろうかという不安はどうでしょうか。ミドルの方はある程度「自分はこういうものだ」という自己認識があります。また「あの人はこういう人だ」という他者認識もあるでしょう。ある程度、自分が自他ともに確立しているように見える状態です。

ただ、ミッドライフクライシスはその認識が「どうもこれではないのではないか」というところから始まります。いわば、いったん確立したはずの「イチの私」が疑わしくなり、本当にこれでいいのかと思うところから始まります。

ゼロからイチを作るのが自分探しだとすれば、ミッドライフクライシスはこれまで築いてきた自己イメージを一旦崩し、そして自分がどういう存在なのか改めて作り直す作業になってきます。これは見方によっては20代の自分探しの時以上に、厄介なことと言えると思います。

乗り越えるために大切な2点

ではミドルの危機を乗り越えるために、どのようなことが大切なのでしょうか。ここでは特に重要な2つのことをお伝えします。

まずは徹底的な内省

まず大切なことは、自分自身を徹底的に内省することから始まります。自分とはそもそもどんな人間で、何を望んで生きているのか、こうしたことを一度徹底的に見つめ直す時間が必要不可欠であるということです。

内省には、いろいろな方法があります。瞑想の時間をもったり、一人で静かな自然を歩く時間を持ったり、信頼できる仲間と親密な時間を過ごしたりなど、人によって様々だと思います。大切なことは普段の肩書きを外した時間をもつことです。それは自然体な自分に立ちかえるためです。

私たちは生きているうちに、いろいろなものを背負いながら生きています。必ずしも自分が望んだものではないものも一緒くたに背負っているうちに、知らず知らず自分が本当は何を望んでいるのかわからなくなってしまいます。ミッドライフクライシスとは簡潔に言えば、自分を見失っている状態です。普段の肩書きを取り外して、まっしろな自分でいる時間を作ることをぜひ心がけてください。

いったん肩書きを外し内省をした上でやっていただくことは「自分を再定義すること」です。自己が築き上げたものから一度距離を置き「もしかしたら私はこういうことがやりたかったのかもしれない」「私は本当はこういう人なのかもしれない」といったように認識を変えていくことが、新しい自分になるために大切です。

次にロールモデルの存在を見つけること

もう一つが、自分の参考となるロールモデルの存在を見つけることです。人は自分一人ではなかなか変わらないものです。人は周りの人に影響を受けながら変化していきます。

内省で見つけたこんな自分になっていきたいという人を、具体的に見つけてみることが大切です。人間は誰か目標とできる人がいれば、進んでいけるものです。また30代以降で人生を大きく変えた人を見つけることで、その人の姿が刺激となり、自分自身も変化することができます。

内省することと、ロールモデルの存在を見つけること。私もこの2つで立ち直りました

中年の危機を乗り越えた人の3例

実際に、中年の危機をチャンスに変えた人の例は多くあります。ここでは著名人の3例を取り上げてみましょう。

武田鉄矢さんの例

俳優の武田鉄矢さんの例は有名かもしれません。人気ドラマ「金八先生」や「幸福の黄色いハンカチ」などヒット作を連発していた武田さんは42歳の時から精神的な不安定に悩まされていたそうです。「101回目のプロポーズ」などヒット作品で主演を務め、多忙な中で「このままでいいのか」という悩みが付きまとい「何をしても楽しくない」という状態があったそうです。その状態は20年にわたって続いたのだといいます。

精神科の医師の診断は「過剰適応症」とだったそうです。それ以来、なんでも適応するのではなく「断る」ことの大事にしたのだといいます。自分が「No」ということを明らかにすることで、自分自身を確かめていく作業だったそうです。

英語で日記を書いたり、合気道を始めたりしてその不調を徐々に抜け出し、日常にも喜びを感じられるようになったといいます。まさに「成功者」がミッドライフクライシスに陥る典型の例と言えるでしょう。

丸岡いずみさんの例

アナウンサーの丸岡いずみさんも、ミッドライフクライシスに陥ったことを公にしています。北海道文化放送から日テレのアナウンサーに抜擢され「奇跡の38歳」とも言われるほどの人気者になり、番組に引っ張りだこだった最中、突如として精神的に不安定な時期に入ったのだといいます。

「仕事やすんでうつ地獄へいってきた」でご自身の40代の中年時代の苦しみを語っています。

その後、素の自分自身を見つめ直すことで、立ち直り、ご結婚され子どもも出産されました。

丸岡いずみさんはミッドライフクライシスを乗り越えた後のあるインタビューでこんなことを語っています

「何者でもなくなった自分を大切にしてくれる家族や友人、仕事以外にも大切なことがあるんだという気持ちになりました。結婚して自分の家族を築きたいと思ったのも、そうした変化の一つです。出口が見えないときは苦しかったうつ病ですが、人生はかえって豊かなものになりました

辛い時期があったかこそ今がある。そうした話は多くの方に勇気を与えてくれます。まさに中年の危機を、飛躍のチャンスに変えた方と言えるでしょう。

夏目漱石の例

過去の偉人では、明治の文豪、夏目漱石の例が有名です。30代半ばでイギリス留学中に、引きこもりになってしまいます。夏目漱石はその2年間を人生で最も不愉快な2年と語ります。

倫敦に住み暮らしたる二年は尤も不愉快の二年なり。余は英国紳士の間にあつて狼群に伍する一匹のむく犬の如く、あはれなる生活を営みたり。
(倫敦に住み暮らした二年は、最も不愉快の二年です。私は英国紳士の間にあって、狼の群れに肩をならべる一匹のむく犬のように、あわれな生活を営みました。)

(文学論)

しかしその引きこもりの時期は、夏目漱石にとって自分とはなんなのかを深く見つめる機会になったのだといいます。ミッドライフクライシスを「徹底的な内省」の時期にしたのです。その内省を土台にしてその後「我輩は猫である」「坊ちゃん」といった名作を世に生み出していきました。中年の危機があったからこそ、歴史に残る小説家となったのです。

こうした3人の例を見ると、30代から50代の人生の中盤で精神的な危機を迎えたからこそ、その後の人生で飛躍を遂げられたことがわかります。それはミッドライフクライシスに悩まされる私たちにとって大きな希望なのではないでしょうか。

乗り越えた先にあるもの

経験者の例から学べることは、中年の危機を乗り越えた先には、それまでとは明らかに異なる世界が待っているということです。

危機を乗り越えられた人というのは、自分の人生を再定義できた人とも言えるでしょう。それは自分をデザインし直すといってもいいでしょう。自分の人生というキャンバスにどんな絵を描くのか、改めて構想してみること。そう考えてみると、中年の危機は自分を変える大きなチャンスの時期と言えるのではないでしょうか。

心理学分野の国際的な研究でも、中年の危機を乗り越えると、自分自身と自分の関わる世界に対して好奇心が高まることがわかっています。経験した苦悩によって、人生に対する新しいアイデアが生まれ、創造的な解決策をもたらし、人生にブレークスルーをもたらすものだといいます。

私自身も34歳のときに、深刻なうつ状態になりました。何をしてもまったく楽しさを感じることができず、過ぎたことをひたすら悔い続ける1年弱を送りました。私自身の経験からしても「ミドルの危機」は非常に辛いものだと知っています。

しかしその状態で3ヶ月、徹底的に内省し、大企業からの独立、プロコーチへの転身、日本一周、九州移住など2年前の自分では考えられないようないまを生きています。

自分の経験からも、ミドルの危機を乗り越えた先に、とても豊かで鮮やかな世界があることをお伝えしたいと思っています。それはまるで、険しい山道を登り切った先に飛び込む壮大な景色にも似ているように感じます。ぜひ「ミドルの危機」を乗り越えた先にある、豊かで鮮やかな未来へご一緒に進んでいきましょう。

苦しみを乗り越えた先には、必ず光があるよ。焦ることなく一歩ずつ進んでいこう!

追記:コーチングサービスをお届けています。ご興味ある方は以下のページをご参照ください。

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